FAZER LOGIN「ここからここまで移動するのに馬で5日はかかる。国境の城壁に沿って損壊がないか確認しながら進んでいく」
そう話しながら、腰を抱いていた手が胸に触れ始める。もう片方の手でガウンの腰ひもが解かれ肩からすべるように落とされる。首筋に唇をつけながらセオドアが話を続ける。
「野営のテントは、暗くてとても寒い」
胸に触れる指の動きと、優しく啄む首筋の唇の感触に、ローティシアの体から力が抜け、セオドアにしなだれかかる。
「寝台は硬くてとても冷たいんだ」
顎を持たれ、後ろから唇を奪われる。その間も別の手はローティシアの柔らかな胸に触れ、その頂をいたずらしつづけている。
「そして、柔らかく温かいあなたがいない」
セオドアは、夜着の肩ひもを口で引っ張ってほどくと、胸をはだけ直接触れる。温かく大きな手のひらの感触にローティシアは思わず呻いた。
その呻きを吸い取るように再び唇が寄せられ、舌が絡まり合う。
「ロッティ、あなたをこうして抱きしめたかった」
そう耳元で呟か
「ここからここまで移動するのに馬で5日はかかる。国境の城壁に沿って損壊がないか確認しながら進んでいく」そう話しながら、腰を抱いていた手が胸に触れ始める。もう片方の手でガウンの腰ひもが解かれ肩からすべるように落とされる。首筋に唇をつけながらセオドアが話を続ける。「野営のテントは、暗くてとても寒い」胸に触れる指の動きと、優しく啄む首筋の唇の感触に、ローティシアの体から力が抜け、セオドアにしなだれかかる。「寝台は硬くてとても冷たいんだ」顎を持たれ、後ろから唇を奪われる。その間も別の手はローティシアの柔らかな胸に触れ、その頂をいたずらしつづけている。「そして、柔らかく温かいあなたがいない」セオドアは、夜着の肩ひもを口で引っ張ってほどくと、胸をはだけ直接触れる。温かく大きな手のひらの感触にローティシアは思わず呻いた。その呻きを吸い取るように再び唇が寄せられ、舌が絡まり合う。「ロッティ、あなたをこうして抱きしめたかった」そう耳元で呟かれると、ローティシアの背筋に快感が走り、セオドアの手のひらに、もっととねだるように背を反らせて胸を押し付けた。口づけをしながらセオドアはローティシアを抱きかかえ、寝台に向かい、その体をそっとシーツの上に下ろす。彼のいないひと月の間、この逞しく筋肉を纏う胸に抱かれることを夢にまで見た。セオドアの背中に手を回すとためらいがちに抱き着いて、小さく呟く。「私も‥‥私もです」――テオ様に抱きしめられたかった……自分の腕にふれる彼の背中に、緊張が走るのが感じられた。もしかしたら、そんな言葉は言ってはいけなかったのかもしれない。でも、どうしようもなく心の声が零れてしまった。セオドアは、顔を上げローティシアの唇を激しく奪い、その激しさにローティシアは翻弄され呑まれていった。◇◇◇情熱的なひと時のあとの余韻の中で、自分の胸元に丸まって眠っているローティシアを見ながら、セオドアは、晩餐の前の出来事に思いを馳せていた。ようやくローティシアと二人きりになり、すぐそこに誘うような可愛い唇があった。
晩餐室に現れたローティシアを見て、セオドアは、二人きりの穏やかな晩餐でないことを悔やんだ。帰還の途中で、せっかく会議をするために城まで来たのだから、奥方に挨拶を、と彼らにうるさく言われ、仕方なく晩餐の席にローティシアを呼ぶことになった。いずれは顔合わせをしておくべきだが、それは、温かくなってここで夜会を開くときにでも、と思っていた。むさ苦しい彼らとローティシアを、同じ席に座らせて食事をさせようとは考えていなかった。隣に座り、皿をつつきながら皆の話に耳を傾けているローティシアの姿を見つめていると、周りの話が少しも入らなくなる。レースの襟が首元までついているとはいえ、深い襟ぐりの下の胸のふくらみが押し上げられ、その隙間から柔らかい胸が覗き見える。この姿は他の男が見ていいものではない。「食べているのか?さっきからちっとも皿の料理が減っていないが」ほんのり赤くそまった頬をさらに赤くして、セオドアの方を振り向いて恥ずかし気に応える。「皆さまと同じペースで食べていたら、もうお腹がはちきれそうで、入りません」はちきれそうになっている白くて滑らかな腹を想像して、体が熱くなった。退屈していないか、と聞くと、『辺境を守ることの大事さが知れて、皆さまの話は興味深い』などと可愛らしい返事をする。膝に置いた手を撫でるように動かすと、ふぅ、と甘やかなため息が漏れた。ほんのり赤く色づいた首筋が自分を誘っているように感じる。ふと目を上げると、自分たちの姿をニヤニヤと笑って見ている輩たちがいた。不愉快極まりない。冷たい目でにらみつけて、晩餐をお開きにすることにした。自分の胸元に頬をつけてもたれているローティシアの細い肩に、体が冷えないように湯を掬ってかけてやる。気づくと、火照った顔をぴたりと自分の胸につけてすぅすぅと寝息を立て始めた。しばらくそのまま湯を掬ってかけてやったり、背中を撫でてやったりしていたが、さすがに湯が冷めると風邪を引く。「ロッティ、このままここで寝たら風邪をひく。体を拭いて寝台に行こう」そう耳元に囁くと、いやいやをするように胸元に頬をつけて首を振る。子どものようなその仕草に思わず笑みが漏れた。「さ、立って」そう言って脇を持ち、湯桶の外に立たせる。湯に濡れてしっとりしたした白い肌。小さな体に形の良い胸が腰の細さを際立たせる。眠気でぼんやりとして胸を隠
以前と同じように、二人の晩餐は静けさのなかで進んでいた。目の前に、セオドアの皿の半分ほどの量の料理が、美しく盛りつけられている。このひと月で、料理長のベイスンは、ローティシアの胃袋の容量をすっかり把握してくれたらしい。「辺境巡回とは、どのようなことをなさるのですか?」先ほどのこともあって、何の会話もないまま食事が続くのがどこか心細く、ローティシアは声をかけた。自分が尋ねたところで、理解できるかはわからない。けれど、辺境で何が起きていて、セオドアが、どのようにそれを守っているのか――彼のしていることを知りたいと思った。「そうだな。まずは、国境に築かれた城壁の管理だ。これが崩れたり、あるいは意図的に壊されたりしていないか、確認をする。壊れたところから侵入してくる不届き者もいるし、管理が行き届いていなければ、隣国に侮られる原因にもなる」セオドアは、ナイフとフォークを一度置き、言葉を継いだ。「三年前の戦争で、国境沿いは随分と破壊されてしまった。ようやく、その修復が終わったところだ。だが、戦後とはいえ、警戒は怠れない。修復後も駐屯軍によって日々巡回し、異常がないかを確かめている。加えて、雪の降る前と夏の始まり、年に二度は、私自身が実際に巡回をして、各所の様子を確かめるようにしている。長く辺境に駐屯していると、兵士たちもどうしても気が緩む。緊張感を保たせるためにも、私自身が巡回することが必要なのだ」その語り口は理路整然としていて、彼がいかに真剣に領を治め、国を守っているのかが伝わってくる。 ローティシアは自然と手を止め、聞き入っていた。それに気づいたのか、セオドアが手元にちらりと視線を向け、グラスの水で喉を潤すと、わずかに咳払いをした。「‥‥こんな話は、女性には退屈だったかもしれない」自分が何の相槌も打たず、黙ったままでいたせいだろう。彼は、自分がこの話に興味を示していないと思ったに違いない。 そうではない。ローティシアは、辺境の守りに熱意を注ぐ彼の話に心を奪われていただけだった。――まただ 気の利いた言葉一つ返せない自分が、もどかしい。
バン、と大きな音を立てて扉が開かれた。「ロッティ! 父さんがネーベを家に連れて帰って良いって言ってくれたんだ!だから‥‥」コンラートがいつものように、遠慮なく部屋の扉を開けて入ってきた。そして、ソファに座るセオドアの姿を見て固まる。コンラートの後ろからメイアと体の大きな赤毛の男が慌てて走ってくる。「待ちなさいコンラート!勝手に部屋に入ってはいけない」追いかけて来た甲冑をつけたままの男性が、部屋の入り口で礼をしてコンラートの腕を引いた。「閣下、申し訳ございません。コンラートがご無礼をいたしました」セオドアは、ローティシアの手を離し、立ち上がって冷たい声でその男を見据えた。「エンリオ、主君の居室になんの前触れもせずに勝手に入るなど、子どもといえどあまりに礼を失しているだろう。どういうことだ」ローティシアは、驚いてセオドアを見つめた。彼のこんな冷たい声を聞いたことが無かったからだ。コンラートは青い顔をして立ちすくんでいる。ここで助け船を出したらセオドアの機嫌を大きく損ねるかもしれない。でも‥‥「テオ様、申し訳ありません。私が悪いのです。この子猫はコンラートが見つけて、一緒に助け出したのです。世話をするために、好きにこの部屋に出入りしてよいと私が伝えました。叱られるべきは私です」立ち上がって、セオドアとコンラートの間に立つようにして声をかけた。セオドアは、ゆっくりとローティシアの方を振り向く。「ロッティ。あなたが誰にでも優しいのは構わないが、守らねばならない秩序というものがある。コンラートが、あなたとの関係を混乱させたままこの城で生活すると、いずれ困るのは彼だ。主君を愛称で呼ばせたり、自由に居室に出入りさせたりするのは、彼のためにならない」その通りだ。ローティシアは告げられた言葉を噛みしめる。寂しさにかこつけて小さな子どもを混乱させてしまったのは自分だ。「はい、肝に銘じておきます」うつむいて手を握りしめる。その様子に慌てたように赤毛のエンリオと呼ばれた男が子どもの頭を押さえる。「閣下、大変ご無礼をいた
セオドアは、第一駐屯地で必要な処理を終え、城への帰還に目途がついたとき、正直なところ、ひとりで馬を駆って、すぐにでも城へ帰りたいという思いでいた。しかし、自分の立場として、そうした身勝手な行動をとるわけにもいかず、その眉間の皺はさらに深くなり、周囲はますますそれに怯えた。ようやく城の前広場に帰ってきた時、使用人たちと共にローティシアが笑みを浮かべて迎えてくれた。思わずその場で抱きしめたくなる衝動に駆られたが、この一か月、まともに湯にも入っていない自身の身を思うと、彼女に近寄ることが憚られた。「おかえりなさいませ」彼女がお辞儀をし、そっと近づいてくる。だが、セオドアは一歩下がり、軽く頷くだけに留めて居室へと足を向けた。「私のいない間、不便はなかったか?」後ろを早足で追ってきているローティシアに声をかけながら、少し歩くペースを落とす。「はい、皆さまに良くしていただいて、不自由なく過ごしておりました」柔らかな声が、素直にそう答える。私の不在を、寂しく感じた瞬間はなかったのだろうか。そんな思いが胸をよぎったとき、彼女の口から、おずおずとした小さな声が洩れた。「‥‥何か、お手伝いいたしましょうか?」着替えを?湯あみを?一瞬、思考があらぬ方向へと飛躍した。しかし、今の自分が湯に浸かれば、湯はたちまち濁りそうだし、それを彼女に見せるのも、触れさせるのも気のりはしない。ましてや何もしないで彼女の手を借りるなど到底耐えられそうになかった。「いや、けっこうだ。後で、あなたの部屋で話をしよう」これ以上話していると、細い腕を引いてそのまま部屋に連れ込んでしまいそうだった。そうなる前に言い捨てるようにして、自室へと足を踏み入れた。武具を外し、着替えを手伝う侍従の横で、ドーバンが不在中の城内の様子を報告していく。「奥方様には、城内で必要なものをすべてご確認いただきました」最後に、と付け加えてドーバンが発したその言葉に甲手をはずす手が止まる。「私は、彼女が快適に過ごせるように配慮
セオドアは、東の国境要塞にある執務室で、この地域の管理官を務める、ボーグムント=コグウェルから、ここ最近の国境付近の情勢についての報告を受けていた。「先日捕らえたドラグナの密偵を取り調べたところ、どうやら東の鉱山から物資を略奪するつもりだったようです。鉱山付近に接近していた隣国の兵も、その情報に基づき排除いたしました」「‥‥まったく、懲りない連中だ。さて、どうしたものか」和平条約を結んだとはいえ、狩猟民族から成り上がったドラグナは、まだ経済の基盤を築ききれていない。資源がなければ奪えばよい、という発想から脱しきれずにいるのが実情だ。「皇宮からも、こうした行為に対する遺憾の意を込めた書簡を送っている。しかし向こうは、“侵略は一部の民族によるもので、国家としても手を焼いている”と、逃げ口上ばかりだからな。陛下もご不快のご様子だった」「いっそ、ドラグナを併呑してしまえばよいのでは?」副官のエンリオが、浅黒い頬の無精ひげを擦りながら、軽口のように呟いた。「‥‥取ったところで、だ。ここよりさらに寒さの厳しい北の地を領土に加えたところで、管理の手間が増すばかりだろう。陛下も同じお考えだ。向こうが勝手に崩壊してくれれば良いのだが‥‥しぶとい民族だからな」北の辺境を侵略することで、勢力を拡大してきたドラグナ帝国。その領地は辺境よりさらに北に広がっており、継続的な農耕には適さない土地が多い。狩猟を主な生産手段とする彼らは、より肥沃な南の地に執念ともいえる執着を示し続けてきた。結果として、フェアファックスの辺境領は、常にその矛先を受け止める盾となってきたのだ。辺境の巡回は、極めて重要な任務だった。少しの油断が侵入経路の見落としにつながる。警備が徹底されていることを敵に知らしめ、同時に、帝国内にも辺境の重要性を認識させる必要がある。また、セオドア自身が駐屯地に足を運び、警備状況を直接確認することは、辺境軍全体の緊張感を保つ上で欠かせなかった。国境にある四つの駐屯地を巡回しながら、要所を確認して回る。駐屯地のある要塞から次の要塞までは、軍馬を駆っても三日はかかる距離だ。戦時中に破壊された国境の城壁は荒れ果てていたが、この三年でようやく修復を終え、敵の抜け道をすべて塞いだところだった。本来であれば、雪が降る前に巡回を終えるべきなのだが、今年は結婚の







